不登校の子どもたちの急増を受け、横浜市教育委員会は小中学校の児童・生徒が、健康診断を校外でも受けられる取り組みを今年度から試行的に始めた。法定の学校健診は校内での集団健診が多く、不登校の子どもたちの病気のリスクが見逃されているとして、当事者らから対策を求める声が上がっていた。
全国的にもまれな試みといい、市教委では「対象者への周知や医師への報酬など課題を検討していきたい」としている。
学校保健安全法で、学校は毎年度子どもたちに健康診断を実施するとされているが、不登校の子どもたちの場合、決められた健診日に登校できず、受診できないままになっていることが多い。文部科学省も昨年9月の事務連絡で「健診機会の確保」を自治体などに呼びかけているが、地域の実情が違うとして現場の判断に任されている。
市教委によると、2023年度に市立小中学校と義務教育学校に通う児童・生徒約25万人の中で、不登校のため学校健診を受けられなかった子どもが1375人いたことがわかった。そこで今年度、医師会などの協力が得られた市立小中学校の4校で未受診者に希望を募り、学校でなく校医の医療機関(内科・歯科)で受診ができるよう、7月から試行を開始した。4校の未受診者計92人のうち、40人が希望し、9月末時点で27人が受診したという。
参考にしたのは大阪府吹田市で、21年度から未受診の市立幼稚園の園児と小中学校の児童・生徒が、校医のいる医療機関ならどこでも受診できる体制を整えた。費用は1件につき1500円を市が負担する。初年度の受診率は未受診者の1割ほどだったが、昨年度は2割近くに上がってきているという。
横浜市教委に校外での無料健診の実施を訴えてきた「子どもと共に歩むフリースペースたんぽぽ」(同市鶴見区)の一之瀬百樹理事によると、思春期のホルモン分泌の問題や側彎(そくわん)症、虫歯や視力低下などで対応が遅れ、のちの人生に深刻な影響が出るケースもある。
横浜市の試行について「一歩前進」と評価。一方で現在は校医のボランティアとなっており、「しっかりと予算を付けて、全市的に対応してほしい」と話している。(足立朋子)