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高校生で不登校になるとどうなるの? 現役高校教員に聞いてみた

取材

2017年05月10日

現在、高校への進学率は97%を超えており、高校への進学・卒業はいまやスタンダードとなりました。しかし、高校生の不登校はけして少なくはありません。

政府統計の児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査(2016年)では、高校生の不登校を含む長期欠席者の割合は2.4%。これは、40人のクラスに約1人いるという計算になります。

高校は義務教育ではないので、進級や卒業のためには単位が必要です。では、不登校になった生徒は一体どうなってしまうのでしょうか?
全日制と通信制、2つの高校で働いたことがある高校教員のMさんに話を聞いてみました。

高校生の不登校 補講や課題、別室登校でも単位は取れる?

── 全日制高校では、不登校になる生徒はどれくらいいましたか?

「学校にもよると思いますが、私が働いていた私立の全日制高校だと、クラスに1人いるのが普通。0人や2人だと珍しいな、という感覚でしたね

── 全日制高校の場合、不登校になると留年などになると思いますが、1年間にどれくらい休むと留年になってしまうのですか?

1つの教科につき、3分の1以上の欠席で単位を落としてしまいます。
例えば、72時間の授業時間が設定された科目だったら、23時間以内までは休んでも単位を取得できますが、36時間しか授業時間がない科目だと、12時間以上休んでしまうと単位が取得できないため、留年ということになってしまいます。多くの全日制高校は学年制なので、この学年でこの単位を取ると決まっています。なので、その単位を落としてしまうと、また1年間やり直して取ることになってしまうんです。
ただし、選択履修科目のように4つの科目のうち2科目の単位を取得していれば可、という場合は、3科目分の単位を取得できなくても進級はできるはずです」

── なるほど。出席日数が足りない場合、補講などを受けてもどうにもならないものですか?

全日制高校は、出席日数のチェックが厳しい学校が多いので、補講などでは難しいと思います。ただ、出席日数が足りていればテストの点数が赤点(30点以下)でも、課題の提出や補講で学校がフォローしてくれる場合は多いんじゃないでしょうか」

── 登校しているが、保健室や別室登校となっている場合も単位にはならないですか?

これも残念ながらならないですね。やはり全日制高校では、出席回数が重視される傾向にあるので……」

留年確定…… 転校する? 中退する?

── では、出席日数が足りなくなり、もう留年が確定しまった。でも生徒は留年するのは嫌だ、となった場合はどうなるのでしょう。

「大学の付属高校ではそのまま留年する人も多いですが、そうでない場合は中退や転校をする生徒がほとんどだと思います。学校側も、出席日数が足りなくなってきた時点で生徒やその親に声がけをしてフォローはしますが、やはり単位が取れないと留年になってしまうので……」

── 全日制の高校へ転校するのは難しいのでしょうか?

「全日制高校間の転校にはハードルが3つあるんです。
1つ目は編入試験に合格しないといけないということ。編入試験では、国語、数学、英語及び面接試験が必要だったり、申込み期間が決まっていたりするので、タイミングや学力が必要になります。
2つ目は、生徒数の定員がいっぱいの学校には入れないということ。
3つ目は、転校前に修得済みの単位と編入後の学校のカリキュラムの関係で、転校後の学校で卒業に必要な単位が修得できなければ、出願することもできません。
偏差値や生徒数の部分で妥協すれば、編入できる学校は増えるかもしれませんが、もし前の学校で不登校だったなら、編入後にまた通えなくなると、また留年になることは十分ありえるので、そういったことも考えて通信制高校を選ぶ生徒は多いと思います」

── 高校の先生は転校先の相談に乗ってくれたり、一緒に探してくれたりするものですか?

「先生によりますが、多くの先生は転校の仕組みや通信制高校、単位制のことを知らない先生も多いと思います。大学でも『そういうものがある』ことは習いますが、詳しい仕組みやどんな特色の学校があるかは詳しく習うわけではないので、アドバイスも難しいでしょうね」

転校後 通信制高校には元不登校生も多い?

── Mさんは通信制高校の教員もしていたそうですが、通信制高校に元不登校という生徒は多いのでしょうか?

「これも学校によると思うのですが、私の勤めていた学校では不登校が原因で転校してくる生徒は50%くらいです。ただ、話を聞いたら実は不登校だったという生徒も合わせると65%くらいでしょうか。他には、発達障害がある生徒や大学受験に集中したいから、という理由で入ってくる生徒もいますね」

── 全日制から通信制に転入しても、頑張れば同級生と同じタイミングで卒業することはできるんでしょうか?

卒業までに必要な単位数と、1年間に取れる単位数は決まっているので、それ次第ですね。例えば通信制高校では卒業までに74単位が必要ですが、1年間に取得できる単位が30単位だとすると、2年生になるタイミングで転入する場合は1年生の時点で14単位取得していないと、3年間での卒業は難しいですね。学校によって1年間に取れる単位数は変わると思うので、確認してみて欲しいです」

── ありがとうございました! では、全日制と通信制、両方の学校での教員経験から、不登校になった高校生にどんなことを伝えたいですか?

不登校になったからといって、欠陥があるとか人生終わりということは絶対にないです。不登校といっても、環境が自分に合わなかっただけのことも多いので、学校を変えて1からやり直すのもいい方法だと思います。そして、通信制高校に転校するにしても建物の作りとか校則の有り無し、生徒の雰囲気などそれぞれ特色があるし、実際見てみて自分に合う学校を選んで欲しいですね。
環境を変えるのは勇気がいることだし、上手くやれるのかという不安もあると思うけど、転校前は苦しそうな表情だった生徒が、環境が変わって全く違う顔になる場合も多いんですよ。だからまずは、他の選択肢を知ることからはじめてみるといいかもしれませんね」

まとめ

  • 全日制高校では、1つの教科につき、3分の1以上の欠席で単位を落としてしまい留年となる
  • 試験での赤点は課題提出などで進級可能な場合もあるが、出席日数が足りない場合は留年となる可能性が高い
  • 全日制の高校へ転校するには、編入試験、生徒の定員、カリキュラムなどのハードルがある

全日制高校で不登校になると、このような問題が起きることがわかりました。

留年や転校というとあまりいいイメージを持たないかもしれません。しかし、転校ができないわけではないし、通信制高校や高卒認定試験など別の選択をすることも可能です。
なので、「もう終わりだ…」などと思いつめずに、新しい選択肢にも目を向けてみると、道が開けてくるかもしれません。

この記事の著者

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株式会社クリスク  ライター
北海道出身。中学時代に約2年間いじめにあい不登校になりかける。高校では放送部に熱中し、その後大学へと進学。上京してはじめて、学校以外の居場所や立場の違う人と接し、コミュニケーションについて考えるように。現在は自分の経験を活かし、子供の悩みや進学に関する悩みについての記事を執筆。