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他人から受け入れられたから自分を受け入れられた 【Iさんの場合 後編】

取材

2017年12月25日

「不登校」とは、いつが終わりなのでしょう。

学校に行けるようになったら?
それとも学校を卒業したら終わりでしょうか。

Iさんは、現在一児の母であり『不登校=ネガティブ』というイメージを変えるための活動を行っている女性です。

そんな彼女は元不登校生。
しかし、学校という制度から卒業したあとも不登校当時と変わらない『生きづらさ』を抱えていたそう。

後編では、Iさんの中学卒業後や、不登校を吹っ切ったきっかけについて伺います。

 

\  前編はこちら /

中学不登校 卒業しても進学しても不登校は終わらない【Iさんの場合 前編】

 

もう乗り越えたなって思ってたのに・・・

のんびりした時間を過ごせる、近所の公園にて

中学を卒業したあと、Iさんは担任の先生から紹介された昼間定時制高校に進学した。

「同じように不登校だった子がくるってことで入ってみたんですけど、毎日登校してましたね。先生たちの威圧感も少ないし、校則とかありつつも自由というか、選択権が子どもにあるような感覚がありました。学校が終わったあとに友だちとお茶して…高校時代は本当に楽しかったですね。
それで、自分も親も、もう乗り越えたなって思ったんですよ」

おなじ境遇の友人を得て、楽しく過ごした高校生活。もう大丈夫、そう思った矢先、短大に進学した彼女はわずか1日で登校できなくなってしまった。

「不思議ですよね。私もわからないし親もわからない。そこで、親をがっかりさせてるなぁっていう気持ちと、やっぱり自分はできないんだって気持ちになりました。ダメっていうレッテルを貼られたことが嫌だったのに、貼られたことを受け入れたほうが楽なんですよ。でもやっぱり嫌って気持ちもあって…」

あなたはダメな子。そうレッテルを貼られたという彼女は、はがそうと頑張った。そして、生きづらさをどうにかしたいとあがき、セミナーや講演に通う中で今のご主人に出会うことになる。

元気で楽しく生きてる人も経験してる

Iさんの趣味のハンドメイド雑貨

「自分の家族ができたっていうのもあるし、夫が全て受け入れてくれる人なんです。それでとても救われたと思いますね」

そのままの自分を愛してくれる存在に出会い、少しずつ生きづらさが解消していったというIさん。さらに、ある経験が彼女の気持ちを大きく変えていく。

「SNSで、他の人が自分の内面について書いているのを見て、けっこうみんなカミングアウトしてるんだなって思ったんです。SNSなら、友だちじゃない人にも自分のことを発信できると知って、自分も不登校についてカミングアウトしてみたんです。そしたら、意外と『へー』っていう普通の反応だったんですよ(笑)」

明るく話してくれた彼女だが、投稿する前はとても勇気が必要だったそうだ。だが、その勇気を出した価値は十分にあった。

「私が素敵だなって思ってる人が、『私も……』と言ってくれた。不幸そう、辛そうっていう人じゃなくて、元気で楽しく生きてる人も経験してるんだなって思えたら、すごく気が楽になったんです

自分の弱い部分を話すのは、本当に勇気がいることだ。拒絶されたり、憐れまれたりしたらどうしよう。そんなことくらいで、と言われたら……。不安はたくさんある。でも、他の人から受け入れてもらえることで、辛かった気持ちを自分でも受け入れられるようになることも多いだろう。
この『受け入れられる』体験を経験して、彼女はこう過去を振り返る。

「不登校をしている時に、『学校行きたくないんだよね、気持ち悪いよね』って言ったとき、『そうだよね、気持ち悪いよね』って誰かが言ってくれたら、どんだけ楽だったろうって思います。『その感覚間違ってないよ』って言ってくれたら、どんだけ自信になったかなって

しかし不登校当時は、まず吐き出すこと自体ができなかった。

「悪いことをしているという感覚だったから、何か言われることはあっても、自分からは言えない。これ以上悪い子にはなれないですもん。
それに、興味があるからこれしたいって言っても、じゃあ学校行ったらねって返ってくると思ってましたね

なんでこの子はベタベタ甘えてくるんだろう

たまには自分だけの時間を満喫

祖母や母親との関係に苦しんできたIさんだが、現在はご自身も女の子の母親として子育て真っ最中だ。子育てに、自分の生きづらさや不登校の経験は影響しているのだろうか?

「自分が育ってきたような育ち方を娘にも求めてしまって、そうならないとイライラするんですよね。例えば、娘はすごくべったりな子で、どこか行っても家でも『ママ、ママー』とくっついてくるんだけど、それにイライラする。
私はこんなことしてなかったのに、なんでこの子はベタベタ甘えてくるんだろうって。でもこれって、自分が甘えることをOKと思えてないってことなんですよね

その後、自分は甘えることが苦手だと気づいた彼女は、ご主人に甘えられるように練習するうち、子どもの”ベタベタ”も可愛いと思えるようになったんだとか。

現在は、不登校=ネガティブというイメージを変えるため、ブログでの発信や、親の悩みを話す会を開くなどの活動を行っているIさん。
最後に、いま不登校をしている方、その親御さんに対して伝えたいことを伺った。

「不登校をしている方は、とにかく自分を責めないで欲しいです。
よくないことをしてるとか、自分はダメなんだって思うかもしれないけど、そんな気がするだけでそんなことはない! 学校に行かなくても未来は暗くならない。だから、まず自分を大切にして、言葉や刃物で自分を傷つけることはやめて欲しい。もしやめられたら、楽しいとか好きなことに没頭してみてください。

親御さんにも同じことが言えると思ってて、自分を責めたり粗末にしたりしないで欲しいんです。
子どもが大変な時になにもできないとか、子どものためってガマンするのは、すごく美しく聞こえるけど、子どもにとってはすごくプレッシャーになる。だから、息抜きもして、楽しんでいる姿も見せて欲しいですね」

あとがき

不登校していた当時、何を思ってもOKで間違っていないと親に言って欲しかったとIさんは語ってくれた。子どもからすれば、親の影響力は絶大であるからこそ、行動を否定されれば自分を否定されたように感じ、それは自分への否定にもつながってしまう。

一方で、親自身がいっぱいいっぱいで、頑張って尽くしている時に「OK」と言うのは、すごく難しいことなんじゃないかとも思う。自分は頑張っているのに、こんなに我慢しているのに、子どもは甘えているだけなんじゃないか? そう感じても不思議ではない。

最後にもう一つ、Iさんの言葉で印象的だったのが、「自分の問題がクリアに見えていないと、子どものこともクリアに見えないんですよね」という一言。

子どもの不登校でつらいと感じる方がいたら、なぜつらいのか、まずそのつらさをクリアにすることで見えてくることがあるのかもしれない。

このコラムの著者

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株式会社クリスク  ライター
北海道出身。中学時代に約2年間いじめにあい不登校になりかける。高校では放送部に熱中し、その後大学へと進学。上京してはじめて、学校以外の居場所や立場の違う人と接し、コミュニケーションについて考えるように。現在は自分の経験を活かし、子供の悩みや進学に関する悩みについての記事を執筆。