習慣が変わったら人生が変わった【大瀧さんの場合 後編】
取材
2017年10月21日
「高校で海外留学した」そう聞くと、なんだかすごい人という目でその人を見てしまう。
このサイトを見て、直接メールをくれた大瀧さんも、そんな“なんだかすごい人”の1人だ。
大瀧真優さんは、現在大学生として国立大学の国際学部に通っている。
「不登校だった自分の過去を話したかった」
そう柔らかな口調で話す彼女は、一体どんな理由で不登校になり、何がきっかけで留学という決断をしたのだろう。
後編であるこの記事では、海外留学での生活と、不登校についての想いを聞きました。
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無感情に生きてたけど、留学っていいなって思った
不登校から留学するまでに、大瀧さんは学校側と3回面談をしたと言う。1回目は自分だけ。2回目、3回目は親も呼ばれるようになった。
「なんで不登校になってるのかとか、クラスの人間関係とか、勉強について行けてるかとかを確認されました。でもその時は感情がなくて、何を言われても何も感じなかった」
そんな大瀧さんが、親からの一言で感情を取り戻したという。
「親から『不登校からのリスタート留学』っていうのを教えてもらって、不登校になっても、日本の教育から外れそうな人でも海外でならやっていけるんじゃないかと思いました。毎日無感情に生きてたけど、留学っていいなって感じたんですよね」
“できる自分”と”できない自分”のイメージに苦しんでいた大瀧さんが出会ったのは、海外留学という選択肢だった。その動機は、英語を勉強して自分に自信がつけば、元の自分に戻れるんじゃないか。
そんな淡い期待を胸に、彼女は1年半ニュージーランドの高校に留学した。
毎日「あと何日で帰れる」ってカウントダウンしてました
高校生で1人親元を離れ海外に行く、それはやはり一般的ではないだろう。
簡単には帰って来られないし、言語も文化も違う場所に行くことについて、ついこの間まで不登校だった彼女は不安ではなかったのだろうか。
「不安、ありましたね。最初は1ヶ月間だけ行ったんです。でも、バスの乗り方とか家に土足で上がってもいいとかの文化の違いすらストレスだったので、毎日あと2週間…あと何日で帰れるってカウントダウンしてました」
うーん、と少し宙を眺めてから、懐かしそうに教えてくれた留学の不安。そりゃそうだよなぁ。文化も違えば、一緒に暮らす人も、環境もなにもかも違うのだから。
でも「それが良かった」と彼女は言う。
「格言あるじゃないですか!」と言うなり、恥ずかしそうな表情でメモを見せてくれた。今日のために、“不登校から変わる方法”を考えてくれたのだという。
心が変われば、態度が変わる。
態度が変われば、行動が変わる。
行動が変われば、習慣が変わる。
習慣が変われば、人格が変わる。
人格が変われば、運命が変わる。
運命が変われば、人生が変わる
引用:ヒンドゥー教の教え
「私の場合はまず習慣が変わったんです。
違う所に行ったから習慣が変わって人格が変わって明るくなれて、他も変わっていった。だから、心がなかなか変わらなくても、行動とか習慣とか変えられるところから変えようって言いたいですね。
自分の今の判断で、高認受かるかな? 通信に通えるかな? と悩む前に、まず勉強するとか何かやってみた方がいいと思うんです」
人に不登校のことを話すたび号泣してた
ここまで、ずっと笑顔で質問に答えてくれている大瀧さんだが、けして留学に行った瞬間から“不登校でなくなった”わけではない。
留学中も、不登校時代のあるシーンが突然思い出されて辛くなっていたし、不登校で留学してきた子が不登校の話をしていても、大瀧さんは話さなかったという。
「大学に入っても、最初は人に不登校のことを話すたび号泣してました」
辛かったことを人に話したことはあるだろうか。辛い、恥ずかしい、悔しい、そんなマイナスの感情が溢れ出るあの感覚は、人からすれば大したことがなくても、本人にとってはとても勇気がいることで、自分の傷口を洗い流すような痛みがある。
きっと彼女は、そんな傷を受け止められる勇気を、留学で得ることができたのだろう。
ところで、彼女が行った留学は正規留学というもの。これは授業も全て英語で行われるのだとか。
大変じゃなかった? と聞くと、彼女はふふっと笑ってこう言った。
「好きな授業が取れるので、数学とか家庭科とか現地の人に日本語を教える授業とかを取ってました。これだとあまり英語が分からなくても大丈夫なんですよ」
最後に、大瀧さんのこれからの夢を聞いてみた。
「ネットで不登校の相談に乗ってたことがあるんですけど、その人に留学はお金かかるし英語もできないので無理です、と言われたのがすごくショックだったんです。だから、不登校になった…って人が留学という選択肢を簡単に選べるような、そういう仕組みをつくりたいですね」
彼女がこの夢を実現するかどうかは分からない。
しかし、夢を語る彼女からは、今の自分への自信、そして自分はダメだと悩んだ過去を消化したい、そんな2つの気持ちが垣間見えた気がした。
このコラムの著者
きたざわあいこ
株式会社クリスク ライター
北海道出身。中学時代に約2年間いじめにあい不登校になりかける。高校では放送部に熱中し、その後大学へと進学。上京してはじめて、学校以外の居場所や立場の違う人と接し、コミュニケーションについて考えるように。現在は自分の経験を活かし、子供の悩みや進学に関する悩みについての記事を執筆。
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