不登校から通信制高校へ進学する
教育機関を知る
通信制高校は、働きながら勉強する人や通学が難しい状況にある人など、さまざまな事情で全日制高校に通えない人のために作られた教育課程です。
しかし現在は、不登校やひきこもり、高校中退などを経験した子どもたちの居場所にもなっています。
少子化によって高校生の数は減少している中、通信制高校の在籍者は増加してきています。
その理由を知るために、通信制高校の基本的な仕組みを理解していきましょう。
通信制高校の仕組み
全日制や定時制の高校のように「学校に通って決められた時間・決められた科目を履修する」というスタイルではありません。「自学自習」を基本に、①レポー ト作成、②スクーリング(面接指導)、③試験をクリアすることで必要な単位を取得し、高校を卒業するという教育課程です。
働きながら学習したい人はもちろん、不登校の中学生の進学先になったり、不登校の高校生、高校中退者、学業不振者なども、自分のペースで学習しながら高校卒業を目指すことができます。それぞれの進度で学習をすすめるので、卒業までの期間は最短で3年、5年以上かける生徒もいます。
学習のすすめ方
レポートを作成する
教科書や参考書を使って自学自習した成果をレポートとしてまとめ、提出(郵送やインターネットを利用)し、添削指導を受けるというもの。いわば宿題のようなものです。
教科・科目、単位ごとに提出するレポート数が決まっていることがほとんど。通常は1単位あたり年間3回前後(年間50~60本)のレポート提出が必要です。
提出期日までに提出し、学校が添削、その後生徒に返送される、という流れが基本。期日を守らなかったり、レポートの内容がいい加減だと、単位認定の試験を受けられなくなります。
スクーリング(面接指導)を受ける
登校して、先生の指導を直接受けること。自学自習では理解できないところを先生に教えてもらえる貴重なチャンスです。
一般的に、”登校日”の意味として使われることが多いですが、内容はいわゆる授業です。各科目以外にホームルームや行事などの特別活動も行われます。
教科・科目ごとに出席時間数が決まっていて、月に2、3回土日などに実施する通常スクーリング、夏期、冬期に数日間合宿形式などで行う集中スクーリング、個々に指導を行う個別スクーリングなど、さまざまなタイプがあります。全日制と比べれば登校日数は格段に減るので、学校に行くのが苦手な人には、精神的な負担が少ないでしょう。学校によっては、登校頻度を増やすことができる場合もあります。
試験を受ける
レポートを期日までにきちんと提出し、スクーリングにも規定時間数しっかりと出席することで、学期末に実施される単位認定試験を受けることができます。この試験で合格点をとることができれば、それぞれの教科・科目の単位を取得できます。
単位制とは?
一般的に、小学校、中学校、全日制の高校は、必要な学習を学年ごとに振り分ける「学年制」です。必要な学習を修得できなければ留年になってしまいます。
一方、学年の区別を設けていないのが「単位制」です。私立の通信制高校では、ほとんどの場合が単位制を採用しています。単位制は、自分自身で学習計画を立てながら卒業に必要な単位を修得していく方法。仮に計画通りに単位修得できなかったとしても、学年は関係ないので、翌年にまわすことができます。この場合、留年というシステムはもちろんないので、周囲の目を気にする必要もありません。
広域・狭域の違い
通信制高校の入学区域には、「広域」と「狭域」という2つの種類があります。
「広域」は、3つ以上の都道府県が入学区域の対象となります。「狭域」は、学校の所在地以外にもう1つの都道府県を入学区域に指定できます。広域か狭域かの見分け方としては、広域の学校には、学校名の先頭や目立つポイントに「広域」と謳ってあることが多い点です。
学習センターや協力校って何?
通信制を選ぶ生徒の中には、毎日の通学が困難な場所に住んでいる人も少なくありません。また、広域の通信制高校には当然、複数の都道府県に住む生徒が在籍しているものです。こうした生徒一人ひとりの環境や事情に合わせて、登校できる場所が学習センターや協力校です。
本校所在地以外に各地に設置されている学習センターや協力校の中から、一番登校しやすい場所を選んで、スクーリングや試験を受けられます。
費用はどれくらい?
公立の通信制では、入学金は0~数千円。授業料は1科目40円~数百円。卒業に必要な単位数で算出してみると、だいたいの学費が分かりますが、それほど負担にならない金額ですむのが特長。一方、私立の通信制の場合は、入学金は0~10数万円。授業料は1単位あたり3,000~1万円弱と費用はかかりますが、職業体験や特技をのばす授業が受けられるなど、学校の特色に合わせたメリットもあります。
公立と私立かの違いによって学費に差はあるものの、高校全体でみると通信制高校の学費は割安といえるでしょう。
卒業するためには
通信制高校を卒業するには、①修業年限が4年(3年)以上、②修得単位の合計が74単位以上、③特別活動(ホームルームや学校行事、クラブ活動など)が30単位以上、という条件をクリアしなければなりません。
①の修業年限については、生徒の学習負担が大きいことを考慮した上で、全日制よりも1年長く設定されています。ただし現在は、”3年以上”でも認められているので、私立の通信制には3年間で卒業できる学校の方が多くなっています。
②の修得単位は、不登校や高校中退による転・編入の場合、在籍していた高校の修得単位や修業年限を加算することができます。
特徴と注意点
自分のペースで学習でき、厳しい校則もなく、より自由な高校生活を送れる通信制高校ですが、決して楽に高卒資格を取れるわけではありません。”自由”であ る分、学習努力は自分次第になるからです。全日制高校のように常に周りで目を光らせている先生や、フォローしてくれる人がいないので、自己管理する力が大 事になっていきます。
一方、こうした自主性が問われる環境でも、学校に行くことができず、将来にも不安を抱えている不登校生にとっては、周囲の目を気にすることなく、高校卒業資格を目指せることが精神的に大きなプラスになるのではないでしょうか。
このコラムの著者
不登校サポートナビ 編集部
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