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「不登校児は全国に約17万人」という現実を知っていますか?

不登校全般

何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくてもできない状況にあるために、年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いた者
引用 – 文部科学省

文部科学省における不登校の定義は、上記のとおりとなっています。

現在不登校の子どもの数は、中学校においては1クラスにつき1人の割合であり、小学校においても300人に1人の子どもが不登校だという事を統計が示しています。

減少傾向にあると言われる不登校ですが、その背景には、教室には入れない保健室登校の子どもの数や、適応指導教室と呼ばれる場所に通う子どもの数を出席者扱いにするという文科省の方針転換があり、学校という場所に行き辛さを感じる子どもの数は決して減少傾向にあるとは言えません。

“個性”よりも”基準”が偏重されてしまう現実

こんなお話をご存じでしょうか?

プロクルステスはギリシャ神話に出てくる強盗です。彼は一台の寝台を持っていて、自分のアジトの前を通りかかる旅人に、「休ませてやろうか」と声をかけま す。そして隠れ家に連れて行き、寝台に寝かせます。もし旅人の体が寝台からはみ出したら、その部分を切り落とし、逆に寝台のサイズに合わなかったら、体を 引き延ばす拷問にかけたと言います。

『プロクルステスの寝台』というこのお話はギリシャ神話ですが、日本でも、無理やりに基準に一致させようとするときの比喩として、よく使われているようです。

現在日本の教育システムの中では、7歳になったら就学が義務つけられています。 チャイムが鳴ったら席に着き、姿勢を正して先生の話を聞くことに始まり、学校の中にはたくさんの決まりごとが存在しています。

授業は学習指導要領にのっとり進められるため一人一人の理解度に合わせていくことはできません。
分からないことを分からないままにして進められる授業の中で、子どもの本来持っている学習への意欲というものが奪われることもあるでしょう。
中学生になれば、生活指導という名目での厳しい服装や髪形などへのチェックが行われます。校則違反ということで、登校を認めてもらえないケースもあります。

学校は、社会への適応能力を学ぶ場であると同時に、本来子どもの居場所であるべきです。しかし、子どもの理解度を無視した早さで進められる授業の在り方や、「基準に合わないから」と子どもを校門や教室から締め出すといった現実を聞くとき、そこには子ども達個々の在り方を尊重するというより、プロクルステスの寝台のような無理が存在しているような気がしてきます。

適応指導教室という受け入れ先

教育委員会が設置する適応指導教室という場所では、不登校になった子ども達が本校に復帰することを目標に、様々なサポートや学習支援が行われています。

ですが、不登校の子どもは、学校システムに不適応な子どもであり、適応していけるように指導が必要なのだという意味が、この「適応指導教室」という言葉の 中に含まれているように感じます。こういった考え方にも、定められた基準に一致させようとしている無理があるように思えてなりません。

学校に行き辛さを感じた子ども達に対して、こういった指導の在り方が適当なのか疑問です。ここでもプロクルステスの寝台の話のような生き辛さを感じてしまうからです。 適応指導教室と呼ばれる場所以外にも、子どもの居場所を探してみる…、そんな柔軟性が今はまだ必要なのかもしれません。

このコラムの著者

堀江ミク堀江ミク

大学では教育学部において、中学校高等学校の美術教員免許を取得。子育ての悩みを抱える「非行」と向き合う親たちの会とつながり2006年「非行」と向き 合う親たちの会を設立。現在小学生向けの学習塾を開設するとともに、産業カウンセラー協会の養成講座で指導者としてカウンセリングの指導に当たる。