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中学生で不登校はなぜ増える? 心理学者に聞く不登校の原因と親の対応方法とは

取材

2017年05月24日

文部科学省が発表しているデータ(平成27年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査)では、小学生の不登校はおよそ250人に1人なのに対し、中学生ではおよそ35人に1人へと急激に増加しています。これはいったいなぜなのでしょうか?

今回は心理学者である渡辺弥生先生に、中学生で不登校が増加する理由や、親はどんな対応をした方がいいのか、学校とはどう関わっていけばいいのかなどを伺いました。

なぜ中学生で不登校は増えるの?

── なぜ中学生のタイミングで不登校となる生徒が増加するのでしょうか?

渡辺小学校と中学校では、かなり大きい変化がありますよね。例えば、中学校では小学校よりも全体の生徒数が増えますから、それに伴いクラス数も増加し、1クラスの人数も多くなります。そこで新たな人間関係を築かないといけない上に、小学校の時にはあまり意識しなかった先輩後輩などの関係も出てきます。
さらに、学級担任制から教科担任制への変化で先生との関係も変わります。勉強も、授業時間が長くなり内容も難しくなるなど、さまざまな変化が起きてくるんです」

── 確かに言われてみると、人間関係でも学習面でも変化が大きいですね。ほかにも、制服や校則なども変化になりますよね。

渡辺「そうですね。さらには、親子関係の質が変わる場合がありますね。子どもが小学生の時は、親が世話を焼くのが普通だったのに、『中学生』をきっかけとして、自分でやりなさいと自立を促すようになる親は少なくありません。それで急に突き放されたように感じてしまう子もいますね。
また友人関係についても、中学生くらいになってくると、みんなで仲良くしようという考えが薄れて、趣味などの嗜好性で友達を選ぶ傾向が強くなります。だから趣味や雰囲気が似ている人同士でだけ仲良くする関係になりがちなんですよ」

── 思春期でもあるので、成長にともなう変化も大きそうですね。でも、不登校になる生徒とならない生徒がいるのはなぜなのでしょう。

渡辺「変化に適応するということは、新しい状況に自分をカスタマイズするということです。でも変化に対する不安が強い人は、自分の考えを変えたり、新しいことや答えが曖昧なものにあわせたりすることに、無意識に強くストレスを感じてしまうんですね。その他にも、勉強が分からないなどの問題が重なって、ストレスが他の子よりも大きくなってしまう、ということはあると思います」

子どもが体調不良を訴えている場合

── 中学生で不登校になる生徒の中には、体調不良を訴える生徒も多いと思いますが、親はどのように対応したらよいのでしょうか。

渡辺「実際に身体の病気の場合もあるので、まずは内科などの病院に行ってみましょう。身体に病気が見つからないのに症状が続く場合は、心の問題も視野に入れ、心療内科などの専門家に相談して、解決策を見つけていく方がいいと思います。どちらにせよ、親と子どもだけで悩んでいても、お互い不安になるだけで解決に至らないので、第三者を頼るのは大切だと思います

── 病気かな? と思っても、子どもが通院を嫌がる場合はどうしたらいいのでしょうか?

渡辺「子どもは不安が先立って嫌がることが多いので、どうやったら体調が改善し、心が軽くなるのか一緒に聞きにいかない? という感じで問いかける方がいいでしょう。診断は結果ではなく解決策を見つけるためですから、一緒に解決していこうという温かい姿勢で臨めば、子どもは安心し、勇気を持つことができると思います

理由が分からないけど行けない・行かない子の場合

── 理由はないけれど、学校に行こうとすると体調が悪くなる、とにかく行きたくないという生徒の場合は、どういう風に対応したら良いのでしょうか?

渡辺「難しいかもれませんが、まずは子どもの行きたくないという気持ちを理解して受け入れることが大切ですね。『なんでそんなこと言い出すの!』『ちゃんと行ってもらわないと困る!』などと、親の方が動揺して子どものことを突き放すような態度を取ってしまうと、子どもの方も『自分は異常なのかな』『人生踏み外してしまったんだ』と不安に思ってしまいますよね」

── 親が不安だと子どもはもっと不安になってしまうんですね。

渡辺「これは小さい頃から言えることで、例えば子どもが転んで膝を擦りむいたときなどに、『痛かったね。でもかすり傷だから大丈夫!』と言う親の子と、『大変!血が出てるじゃない!』とすごく心配する親の子だと、後者の子ども達の方が神経質になる傾向があります。これは社会的参照と呼ばれるんですが、子どもはものごとの判断を親の顔色などの態度から判断する傾向があるのです。ですから、親の不安が強いと、子どもも不安になりやすいとも言えるでしょうね」

学校でのトラブルが原因で行けない場合

── 学校でのいじめや、教師とのトラブルが原因の場合はどうしたらいいのでしょうか?

渡辺「まず、子どもにとって、親と学校が対立して揉めているのは良い状態とは言えませんよね。なのでまずは、親は先生を信頼して頼る姿勢で話ができるといいと思います。例えば、最初から否定的なことを言われたとき、身構えたり心を閉ざしたりしてしまった覚えはありませんか? 先生も同じです。
はなから先生がダメだからこうなったと攻撃姿勢を取ってしまうと、反発してしまう先生もいるかもしれません。
学校や先生は、親と共に一番『子ども』をよく見ている存在です。親と先生が協力体制でいれば子どもにも分かりますから、多少反発した態度を取っていても心の中では安心できるものです。
ただし、学校の先生がきちんと時間を作って対応してくれない、本気で話しを聞いてくれているように感じないなど、信頼できない場合もあるかもしれません。そのような場合は、学校のスクールカウンセラーや養護教諭、教育相談の先生に相談するなど、他の選択肢を探してみましょう」

家にいる子どもを見てると辛い…そんな時はどうする?

── 自分の子が、家でゲームしかせずに他に何もしてないような姿を毎日見ていると、分かっていても親も辛くなる、という声もあるのですが…。

渡辺「こういった時は、私はまず親だけでもカウンセリングに行くことを薦めたいですね。親自身の不安や怒りは、家庭内で発散させても結局家庭の空気が悪くなり、さらに問題が悪化し後悔することになってしまうでしょう。一般に家族は良き理解者ですが、家族の問題が深刻な場合は互いに利害関係があるため、全く自分の生活と関係ない人に不安や怒りという気持ちを吐き出す方が、心を安定できる場合があります。
ただ、カウンセラーも人なので、相性や方針が合わない場合はあります。合わないと思ったら別の方に変えたり親の会を利用したりなど、自分が話しやすい人や場所に出会って欲しいですね」

まとめ

大人になっても、環境の変化は大きなストレスではないでしょうか。中学生の不登校は、意識しているか無意識かは分かりませんが、小学校から中学校への進学で起きるさまざまな変化に適応しようと一生懸命頑張っているプロセスと言えるのかもしれません。

ただ、子どもが不登校になる、ということは親にとっても大きな不安ですよね。子どものことだけではなく親自身が体調を崩してしまうこともあるでしょう。無理をせず、時にはカウンセラーなどの第三者を頼るなどして、自分のケアも心がけることが、結果的には子どもにも家族にも良いのかもしれません。

この記事の著者

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株式会社クリスク  ライター
北海道出身。中学時代に約2年間いじめにあい不登校になりかける。高校では放送部に熱中し、その後大学へと進学。上京してはじめて、学校以外の居場所や立場の違う人と接し、コミュニケーションについて考えるように。現在は自分の経験を活かし、子供の悩みや進学に関する悩みについての記事を執筆。