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死にたいっていう気持ち、すごく分かるんです 【ユウキさんの場合 後編】

取材

2017年11月21日

大人になれば、選択肢が増えると共に、人との距離もとりやすくなるのではないでしょうか。

ですが、子どものときは、家も家族も学校も選ぶことが難しいもの。うまくいっているときは問題なくても、そうでなくなった時、親は、周りの大人はどんな風に子どもに関わっていけばいいのでしょう。
また、気づいてあげることができるのでしょうか?

学校と家庭、両方の悩みから精神的に参ってしまい不登校となったユウキさん。
今ではバイトをしつつ、臨床心理士になるため大学進学を目指して勉強しているそうです。

後編であるこの記事では、現在の生活と、不登校当時から変わったことなどをお聞きしました。

\  前編はこちら /

家でも学校でもストレスを感じて不登校に 【ユウキさんの場合 前編】

負のイメージを持ってたときの自分は損してた

ユウキさんが在籍している通信制サポート校は、毎日登校する必要はない。
それでも彼は毎日登校しているという。

「レポートとかあるんですけど、そんなに難しくないと思うんです。でも、全日制の友だちはすごく勉強してるし、それなら自分も毎日行って勉強しないと、と思って行ってますね」

さらには、学校のオープンキャンパスで後輩の質問に答えるなど、課外活動にも積極的に参加しているユウキさんだが、今の学校に出会うまでは、通信制高校に良いイメージは持ってなかったそうだ。

「自分はやっぱり負のイメージがありましたね。今も時々『え、きみ通信制高校なの?』とか言われることもあるから、良いイメージを持ってない人は多いと思います」

それでも今は、全日制だろうが通信制だろうが別にいいと思う、と彼は言い切る。

「全日制に行ってる友だちに自分の学校のことを話すと、『俺たちの高校より楽しそうだな』って言われるんですよ。
それに、高校よりもその先が重要じゃないですか。全日制の友だちとか、日々の勉強に追われてて、まだ将来の夢とか進路を決められてない人も多くて。でも、自分の学校はみんな考えてるし、結果的に進路も早めに決めてるんですよ。
中学の先生には、『通信制高校なんて行っても意味がない』と言われたこともあるけど、ちゃんと学校さえ選べば、進学だってできるし、負のイメージを持ってたときの自分はほんと損だなって思います

自分で学校を選択し、未来に向かって努力する彼だから言える言葉かもしれない。

もしこれが、『しょうがなく』とか『とりあえず』ということだけの進学ならば、今の学校を好きになれずに、自分の選択を肯定できなかった可能性もあるんじゃないだろうか。

「最近、学校の修学旅行に行ったんです。全国から集まってきた人と話してみたら、この人はこう考えるけど、この人は違うとか、色んな考え方を聞いたら、人ってやっぱり違うなぁと改めて分かった。みんな視野が広いから、そういう人と話してみて、自分もこんなに狭い視野でいる必要もないな、と」

死にたいと思ったこと、何度もありますよ

ここまで聞いて、彼の大きな悩みの1つだった家族には、変化があったのだろうか。

「2年前は暗くて、会話がない家庭だったんですけど、今は笑顔が増えましたね。前はリビングに集まってもみんなテレビ見てただけ。でも今は会話があります。
最近は父親とも話すようになって、政治とかニュースについてとか話してると、意外と物知りなんだなって知って、ちょっと父を見る目が変わりました。祖母との関係も、徐々に良くなってきてますね」

最後に、いま不登校や辛いことがあって悩んでいる方に、伝えたいことはないか?
と聞いてみる。

「いじめとかで自分から死んじゃう子がいて、その死にたいっていう気持ちもすごい分かるんです。
自分も一番辛かったときは、死ぬ方法を考えてたし、電車に轢かれようとか想像してた。何度もありますよ。でもやっぱり恐いんです。それに、悔しくて。
自分が死んで、誰が喜ぶんだよって。家族は絶対悲しむだろうし、周りの人は『また不登校の子が1人死んだんだ』って、それで終わっちゃうじゃないですか。それが嫌だった。
だから、死にたくてもとにかく生きて欲しいですね

 

「頑張れ、って言っちゃいけないとか言うけど、僕はそうは思わないんです。頑張って今の辛いことを乗り越えたら、絶対いいことがある。悪いことがあったら、逆にいいことがあるって考えて欲しいんです」

『頑張れ』とは無責任な言葉に聞こえるかもしれない。
頑張ってるよ! と言い返したくもなる。

でも、死にたいという気持ちを味わった彼からの『頑張れ』は、なんだか『僕も同じだよ』と言っているように感じた。

 

周りの人の手を借りながら、ユウキさんは不登校から新たな目標を見つけることができた。だけど、それはただラッキーだったからではないだろう。
自分の気持ちを話し、時には休みながらも助けを求めてなんでもやってみたからこそ、今の彼がいるのだと思う。

だから彼は、『頑張れ』と躊躇なく言えるのかもしれない。

このコラムの著者

10659245_826332387430680_221170377865295565_nきたざわあいこ

株式会社クリスク  ライター
北海道出身。中学時代に約2年間いじめにあい不登校になりかける。高校では放送部に熱中し、その後大学へと進学。上京してはじめて、学校以外の居場所や立場の違う人と接し、コミュニケーションについて考えるように。現在は自分の経験を活かし、子供の悩みや進学に関する悩みについての記事を執筆。